次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
予言を出された時点でそうなるだろうと覚悟はしていたのだが、現実はオルキスの予想を軽く超えてくる。
オルキスとの結婚を諦めきれない娘たちが、髪か瞳、どちらか片方の色だけが合っているというだけで、未来の花嫁に名乗りを上げてくるのだ。
しかもここ最近では、モルセンヌより北西で暮らしていると言うだけでやってくる者までいる。
「そうだろうな。そなたの嫁の座はこのわたしにも魅力的に見えるくらいだ。小さな望みに縋りつくことくらい、大目に見てやれ」
続いた笑い声をため息で一蹴すると、オルキスは非難するようにすっと瞳を細めた。
「ボンダナ、はっきり言え。次の王は俺か? それともセルジェルか?」
静かに微笑みを浮かべてからボンダナは瞼を降ろし、おもむろに両手の平を擦り合わせた。
「悪いが、お前さんの望む未来は限りなく薄い」
オルキスがわずかに眉根を寄せた次の瞬間、離れたボンダナの手と手の間で小さな光が微かに瞬いた。
「わたしの手の中にある未来の欠片の中には、次期王の姿がふたつ存在している。オルキス王にセルジェル王。しかし力強く輝いておるのは欠片だけ。断言してもいい。未来の王はオルキスお前だ。覚悟を決めなさい」