次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
白馬の高い嘶きが響き渡るとそれが出発の合図となり、四人を乗せた馬たちはモルセンヌに向けて駆けだしたのだった。
テガナ村から出たことがなかったリリアには、目に映るものすべてが新鮮だった。
途中立ち寄った町の人の多さに圧倒されたり、今まで見たこともなかった果物を恐々と口に入れその美味しさに衝撃を受けたり、泊まった宿屋の部屋の豪華さに気持ちが萎縮したりもした。
宿屋に関しては、オルキスの計らいだとは知らされなかったため、父は仕事で家を空けるたびこのような豪華な部屋に泊まっていたのかとリリアがふて腐れてしまう場面もあったが、刺激的でもあり楽しくもある濃厚な時間はあっという間に過ぎて行った。
経由地として最後の街を抜け、雄大な平原を駆け抜けていく。
大きな森に差し掛かると、最後の休憩はここでとるぞと、オルキスが指示を出した。
この森はモルセンヌと、モルセンヌから北西に向かった先にある宿場町とのちょうど中間地点に位置している。
森の中にある池のほとりの一角は、行き交う人々が休息をとれるように整備されているため、四人が到着したこの時も、そこには束の間の休息をとる人々の姿をたくさん見ることが出来た。
リリアもセドマに続いて馬から降り、辺りを見回しながら木漏れ日の下をゆっくり歩き出す。