次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
足を止めたセドマが振り返り「あぁ」と反応を示した。
「お久しぶりです! まさかこんな場所でお会いできるなんて。光栄です! セドマさんは、これからどこへ行かれるんですか?」
「モルセンヌへ」
「そうですか」
リリアも足を止め振り返ったが、近付いてきた男にじっと見つめられ興味を持たれたことに気づかされると、すぐさま男に背を向けセドマから離れた。
苦い気持ちが胸いっぱいに広がるのを感じながら、周囲の視線からをも逃げるように身体を小さくさせ歩き出したが、進む途中でリリアははっとし、確認するように後ろを振り返り見た。
父は珍しく話に夢中になっている。この機会を逃してなるものかと、リリアは次第に駆け足になっていく。
駆け寄ってくる気配に気付きオルキスが立ち止まるのと、リリアがふたりに追い付くのはほぼ同時だった。
「オルキス、ちょっとだけ話がしたいのだけれど」
セドマの様子をちらりと見ながらのリリアの言葉に、オルキスもこくりと頷き同意する。
「そうだな。俺もモルセンヌに入る前に、リリアと少し話をしておきたい」