次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
場所を探すように辺りを見回したオルキスが、視線を止めたのは川辺だった。
「あそこで話そうか」
ちょうど人が離れ空いた場所へ向かおうとするオルキスに、アレフが「オルキス様」と小声で呼びかけた。
「俺はこの辺りにいます。少しくらいなら時間稼ぎも出来ると思いますし」
言いながらアレフがセドマを見たことで、オルキスだけでなくリリアも何に対しての時間稼ぎかを理解する。
「悪いな」
微笑みと共に感謝の言葉を述べ、オルキスはリリアを伴って歩き出す。
川辺に並び立ちやや間を置いてから、リリアは水面をじっと見つめたままぽつりと話しかけた。
「お父さんが……いろいろとごめんね」
ため息を吐いたリリアの頭に、オルキスはそっと手を乗せる。
そしてフード越しに撫でられたことに驚き見たリリアへと、柔らかな笑みを返した。
「いや。アレグロ村長に聞いたが、幼いころに母を亡くしたそうだな。男手一つで育ててきた娘なのだから大切に決まっている」
言葉の温かさがじわりと胸に広がり、リリアは笑顔になっていく。
空気が和んだと思われたその瞬間、オルキスが身を屈め、リリアへと一気に顔を近づけた。