次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
不敵で華麗な笑みを至近距離で見せられたリリアは息をのみ、身体を強張らせる。
「とは言え、こちらも遠慮をする気はない。共に過ごし、リリアのことをもう少し知りたいと思っている」
「わ、私のことを?」
胸の高鳴りと共に、からかっているのかという戸惑いがリリアの中に生まれる。
しかし、オルキスの口元はほほ笑んでいても、赤き瞳は真剣な光に満ちていた。
本気で自分のことを知りたいと言ってくれているのだと分かれば、余計顔が熱くなり、リリアはなにも言えなくなってしまう。
ゆっくりとした動きでオルキスが姿勢を元に戻していく。
オルキスもフードをしっかりと被っているため、顔が遠ざかればその表情も見づらくなり、それが少しだけリリアには惜しく思えた。
「俺に話したいこととは?」
「……私ね、テガナ村を出てからずっと、モルセンヌに着いた後のことを考えてたの」
「着いた後のこと?」
「うん。どんな風に過ごそうかなって」
小さな笑い声を響かせたあと「なるほど」と呟いたオルキスの外套を、リリアは軽く引っ張った。
そして驚いて自分を見たオルキスの瞳を、訴えかけるようにじっと見つめ返す。