次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
「オルキスはモルセンヌに戻ったら……やっぱり忙しい? ……少しぐらい、私に付き合ってくれる?」
「あぁ、もちろん。お望みとあらば、何処へでも連れて行こう。もちろん時計塔にも」
不安に満ちていたリリアの顔は、その一言で一気に輝き始める。
「やったぁ!」
身体全部で喜びを表すかのように、リリアはぎゅっとオルキスへと抱きついた。
「楽しみにしてるね、オルキス!」
リリアのその行動にオルキスは目を見開いたが、すぐに驚きを柔らかな微笑みへと変え、大切なものを両手で包み込むように、リリアを抱きしめ返した。
「俺も楽しみにしている。その時はもっといろんなリリアを俺に見せて」
耳元で囁かれた甘いねだり声にとくりと鼓動が跳ねたのを感じながら、リリアはオルキスの腕の中で、気恥ずかしさで熱くなった顔を上げる。
「いろんなって言われても、私はいつもこんな感じだよ? 新しい発見なんてなにも」
「それはどうかな……例えば」
ほんの一瞬のことだった。
困り顔のリリアへとオルキスが再び顔を近づけ、無防備な唇へと柔らかな温もりを与えたのだ。
リリアは離れて行くオルキスの顔をぼんやり見つめ返した。