次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
「行くぞ、アレフ!」
木にもたれながらセドマの方を見ていたアレフへとオルキスが高らかに声かけたその瞬間、強い風が吹き抜けていった。
風はオルキスとリリアのフードを吹き飛ばし、ふたりの顔を露わにさせる。
声に気付き、白馬を見上げた旅装束の男性から「……オルキス様?」と戸惑いの声が発せられたことで、そこから一気に人から人へと動揺が広がり、場が騒然となっていく。
人々は突然現れた第一王子に驚き、そして王子が予言通りの娘を連れていることにさらに驚かされることとなる。
オルキスは人々が動けずにいる間にここを離れるのが賢明だと判断し、すぐさま白馬の横腹を強く蹴った。
「先に行く」
すれ違いざまにセドマにも声をかけると、オルキスはそこから馬の速度を一気に上げ、人の隙間を駆け抜けていった。
「ここからは俺と一緒だ」
速さに身体を竦めたリリアを、オルキスは片手で抱き寄せる。
「これから嫌って言うほど、俺のことを教えてやる」
こくりと頷き返したリリアの耳元へとオルキスは顔を寄せ、囁くように思いを告げる。
「だから……俺を好きになれ」
甘美な命令に胸が熱くなるのを感じながら、リリアは自分を支えているオルキスの腕をきゅっと掴み、恥ずかしそうに笑みを浮かべた。