次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
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小高い丘の上でゆるりと馬を止めて、オルキスは下り坂の先に見える風車を指さした。
「三基並んだあの風車を過ぎれば、モルセンヌだ」
「風車!? あれね! もうすぐ着くってことよね? 楽しみ!」
輝く瞳で嬉しそうに自分を見上げたリリアに笑みを浮かべてから、オルキスは自分たちが進んできた道を振り返り見た。
オルキスが小さくため息を吐いたことに気づき、リリアも今来た道を確認する。
「ふたりとも、遅いね」
ずっとここまで高速で駆け抜けてきたわけではない。
途中、遠くで牛たちが草を食む姿を見つけ、リリアが牛にまつわるテガナ村での出来事をオルキスに話し始めたときにはもう、白馬はのんびりとした歩みへと切り替わっていたのだ。
それにもかかわらず、すぐに追いつくだろうと考えていたアレフとセドマは、いまだ姿すら見えずにいる。
「たぶん質問攻めに遭い、足止めをくらってしまったのだろう」
「質問攻め? なんの?」
「……さぁ……とにかく、ふたりが追い付くまで、少し待つことにしよう」
オルキスは小首を傾げながらも提案に頷いたリリアをそっと引き寄せて、自分の胸元へと寄りかからせた。