次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい
言い終えれば、また骨ばったその手がいくつかの細かい光を生んだ。
室内が暗いせいか、今度はオルキスの横にいるアレフにもはっきりと光が見えたらしい。
驚きと怯えと畏怖の混ざり合った顔で、ボンダナを凝視する。
見えない糸を操るように指先を動かして、小さな光たちを己の手の中へと引き戻せば、ボンダナがひとつため息を挟む。
「オルキス。私の予言した娘に興味は湧かぬか?」
「あぁまったく。金の髪に緑の瞳。花嫁はユリエルなんだろ?」
ボンダナの予言を聞いて、オルキスが真っ先に頭に思い浮かべてしまったのがサムエトロ伯爵の娘ユリエルである。
金に近い明るい髪を持ち、瞳もエメラルドのような色をしていて、まさに予言通りと言っていい娘なのだが……オルキスはユリエルが苦手だった。
彼女は蝶よ花よと甘やかされてきたせいか、少々性格に難がある。
自分を特別だと思っている節があるため、口調、立ち振る舞いがひどく高慢なのだ。
オルキスの前でいくら淑やかに振舞ってみせても、しみついた性格は隠し切れるものではない。
ふとした瞬間に見せる周りを見下すような彼女の眼差しが、オルキスを不快にさせている。