彼氏売買所
いくら誰が相手でもいいと言っても、啓太郎だけは無理だった。


あの油っこい匂いを思い出すだけで、吐き気がしてくるのだから。


「あんなの売ってもお金にならないでしょ」


そう言って突っぱねると、真由はおかしそうに声をあげて笑った。


「確かにそうだよね」


売買できない彼氏なんて、いても意味がない。


そう思っているタイミングで、当の啓太郎が教室へ入って来た。


啓太郎はこちらを見て手を振っている。


あたしはそれを無視して鞄を机の横に引っかけた。


自分の評判が落ちるのが嫌で啓太郎なんかに優しくしてしまった自分を後悔する。


「ねぇ、どうして啓太郎は愛のことが好きなの?」
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