彼氏売買所
「別に……普通のバイトです」


ごにょごにょと言葉を濁しながらそう返事をした。


目の端で金髪男のニヤ付き顔が気にかかる。


「これからはあたしがここにお金を返しにきます! だから、両親への取り立てとか、辞めてください!」


あたしは顔を上げて、大きな声でそう言った。


狭い階段にあたしの声が大きく響く。


ホスト風の男はそれを見て鼻を鳴らすように笑った。


「わかった。お前からの金はちゃんと受け取ってやる。お前の親への取り立ても一旦はやめよう」


その言葉に光が見えた気がした。


「その代わり、猶予は一カ月だ」


ホストの男がグッと身を前に乗り出してそう言った。
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