彼氏売買所
四方を壁に囲まれた状態で、目の前までトラが迫ってきているような感覚だった。


この場所から逃げ出したい。


そんな気持ちで頭の中は一杯になった。


「答えられない金なんだな」


蓮人の、ため息交じりの声が聞こえてきて、ビクリと体を震わせた。


「この金は受け取れない」


あたしの前に、さっき渡した60万円も含めて戻されてしまった。


返金の為に頑張って来たのに、すべてが水の泡ということか。


あたしは奥歯を噛みしめて蓮人を睨み付けた。


蓮人が何を考えているのかわからない。


なにがなんでもあたしをAVに出演させたいのかもしれない。


「1つ、お前に提案がある」


蓮人が身を乗り出してそう言って来た。


「お前、俺の女になれ」
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