彼氏売買所
☆☆☆

「なにかいい事があった?」


○×金融の事務所内で、蓮人がそう声をかけて来た。


あたしはソファに座り、蓮人が入れてくれたコーヒーをひと口飲む。


今はもう営業時間外で、金髪男も帰って事務所にはあたしと蓮人の2人だけだ。


「幸せだなぁと思って」


そう言うと、隣に座っていた蓮人が笑った。


「なんだそれ」


「人を好きになったこと、なかったから」


「本当に?」


あたしは白いコーヒーカップを見つめて頷いた。


「付き合う人は、ちゃんと好きだって思える相手が良かったの。だからいくら告白されても断ってた」


「へぇ……。じゃあ、俺が最初?」


蓮人が自分を指さしてそう聞いて来た。
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