彼氏売買所
「ちょっと真由、返してよ」


眉間にシワを寄せてそう言うと「どうせゴミ箱に捨てるんでしょ?」と、言われた。


それはまぁそうなんだけど。


あたしもまだ読んでいないのに勝手に読むのは常識的にどうかと思う。


「ねぇ、いらないなら1枚貰うね」


真由はそう言い、目ぼしいラブレターを1枚自分のスカートへとねじ込んだ。


また《彼氏売買所》へ連れて行く気かも知れない。


すぐに感づいたけれど、真由の方が一歩早かった。


真由はあたしのラブレターを持ったまま、教室を出て行ってしまったのだ。


きっとホームルームが始まる直前まで戻って来ないつもりだろう。


「もう、勝手なんだから」


あたしはため息交じりにそう呟いたのだった。
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