彼氏売買所
F組に投げ込まれてしまったあたしが、バイトができるとは思えなかった。


「このまま夏休みになったって遊べないじゃん」


夏休みの間に少しでも学力をつけるように、勉強させられる可能性が高い。


考えれば考えるほど、バイトをすることが現実から遠ざかっていく。


あたしは途中でスマホを投げ出して床に寝転んでしまった。


こんな風になんでも途中で諦めてしまうから、余計に悪いんだ。


頭では理解している。


けれど、一旦なくなったやる気を取り戻すのは難しい。


あたしは寝返りを打って部屋の隅を見つめた。


そこにはこの前のダブルデートで使ったバッグが置かれている。


「あ……」


小さく呟き、這うようにして移動してバッグに手を伸ばした。
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