彼氏売買所
☆☆☆

すっかり陽が暮れて眠りについていた頃、人の話し声が聞こえてきてあたしは目を開けた。


外はまだ暗く、枕元の時計を確認してみると夜中の1時を過ぎたころだと言う事がわかった。


一階から聞こえてくる声は両親のものであるとすぐに理解した。


その瞬間、脳が覚醒していく。


話し声と言っても、普通の声量くらいなら上の階まで筒抜けになることはない。


普段よりも大きな声を出しているから聞こえるのだ。


あたしは小さな明かりを付けて耳を澄ませた。


「毎日こんな時間までなにしてるの」


お母さんのそんな声が聞こえて来る。


自分の部屋にいても、その声色でリビングの雰囲気が緊迫していることが伝わって来た。
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