惚れ薬
お金があれば大変な思いもしなくていいんだ。


タクシーで家まで帰って来たあたしはそう思っていた。


今まで徒歩や自転車が普通だったけれど、それがガラリと覆された気分だった。


両手に荷物を抱えて家の玄関を開ける。


その時丁度洗濯物を取り込んだ母親が廊下を歩いていた。


まずい。


そう思ったが、もう遅い。


母親は立ち止まり、あたしの両手にある買い物袋を見て目を丸くしている。


「ちょっとそんなに買い物してきたの?」


思った通りの反応だった。
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