惚れ薬
誰にも気が付かれないように部屋に持って行く予定が、台無しだ。


なにかいい言い訳がないかと頭を巡らせてみるけれど、何も浮かんでこない。


「どこにそんなお金があったの?」


案の定、その質問をされた。


「セール品だよ。今安くなってるの」


慌ててあたしはそう言った。


母親は怪訝そうな顔を浮かべたまま、あたしを見ている。


「本当に? 変なことしたりしてないでしょうね?」


「へ、変なことってなに? そんなのするわけないじゃん」


そう言いながらあたしは足早に階段を上がった。


心臓がバクバクしている。


自分の部屋に入り、大きく息を吐き出した。
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