惚れ薬
その時だった。


教室の窓際にいた航がこちらへ近づいてくるのがみえた。


航からあたしに話しかける事なんて珍しい。


そう思い、自然と背筋がのびていた。


「なぁ、お前」


仏頂面で『お前』と言ってくる航に胸が痛む。


本当は話しかけたくないけれど、仕方なく話しかけているという雰囲気が、バレバレだ。


「なに?」


あたしは満面の笑顔を張り付けてそう聞いた。


「さっきのなに?」


「え?」


あたしは航の言葉に首を傾げた。


「サキにジュース頼んでただろ」


「あぁ、サキが買ってきてくれるって言うから、頼んだの」
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