惚れ薬
☆☆☆

体育の授業は4時間目だった。


あたしは3時間目の数学が終るのを今か今かと待ち、時計の針を凝視していた。


ようやく授業が終わると、体育を受けるためにクラスメートたちが一斉に動き出す。


あたしは体操着を取りに教室の後ろにあるロッカーへと向かった。


視界の端に航を残しながら、体育の準備を始める。


航は体操着を鞄の中に入れて来たようで、それを手に取るとすぐに教室を出た。


「航、今日はお茶だね」


あたしに近づいて来て真弥がそう言った。


「そうだね。鞄の中のペットボトルだから、昨日より難しいかも」


昨日は机の上に出しっぱなしにされていたから、簡単だった。


「あたしと初美が壁になるから、その間に入れるといいよ」


「わかった。ありがとう」


あたしはそう言い、ポケットから小瓶を取り出したのだった。
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