惚れ薬
☆☆☆

「今日はケンジとデートだから、ごめんね」


初美がそう言って来たのは昼休み中のことだった。


「あたし、なにも聞いてないけど」


あたしは初美を睨みつけてそう言った。


「先に伝えておいた方がいいかと思って」


そう言って落ち込む初美。


田中君との関係は相変わらずラブラブらしい。


惚れ薬を飲ませているのだから当然だけど、今ではそれが癪に障る。


別れてしまえばいいのにと、心のどこかで思っていた。


でも、きっとそれは難しいだろう。


みんなが相手に忠実になっているのだ。


初美が別れを切り出したところで、田中君の気持ちまでは変わらないだろう。
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