惚れ薬
「遼太郎はどうだろう? まだ効果が継続してるのかな」


真弥の言葉にあたしは左右に首を振った。


わからない。


遼太郎は一番効果が強く出ていたように感じられるけれど、それももう切れているかもしれないのだ。


あたしは初美の机の前に仁王立ちをし、初美を見おろした。


一番最後に使った初美なら、まだ少しは効果が残っているかもしれない。


「なに?」


教科書を引き出しへ移動させていた初美が、手を止めてそう聞いて来た。


「薬を返して」


そう言うと、初美はため息を吐き出した。


「ごめん、本当はもう全部使って、空なの」


初美はそう言い、ポケットの中から空になったあの瓶を取り出したのだ。
< 203 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop