あしたの星を待っている
過去と向き合うのは、自分のためだけど、それだけじゃない。
心配してくれるお母さんや、瑠偉くんのためにも。
これからまた出るかもしれない、被害者のためにも。
「この前にうちに来た記者の人に会おうと思う」
後藤先生と話をしたあと、どうしても瑠偉くんには言っておきたくて打ち明けると、彼は驚いたように目を丸くした。
窓枠に腰を掛けたまま、固まっている。
スマホの番号を知らないから、消しゴムを投げて窓に当てるという原始的な呼び方だったけど、気付いた瑠偉くんは、この前と同じように窓から入って来てくれたのだ。
「会ってどうするんだ」
「私の覚えてることを全部、話す。それで、これ以上、私と同じ思いをする子を増やさないよう協力したい」
「分かった、俺も行く」
「瑠偉くんも?」
「つーか、お前。その記者がどこの誰か分かってんの?」
「あ」
そういや、お母さんに名刺を破られたんだった……。
ええーと、なんていう雑誌だったっけ。メモしておけばよかった。
「俺、分かるかも」
「え?」
「あとでまた連絡する」
「あ、あの瑠偉くん……!」
あぁ、行っちゃった。
彼は来た時と同じ窓から外に出て、今度はベランダの枠にぶら下がって、そのまま庭に飛び降りた。
それからスマホを取り出し、どこかに電話を掛けながら道路を走っていく。
記者のことが分かるかもしれないってどういうことだろう。