あしたの星を待っている


しばらく、気まずい沈黙が落ちた。

注文したまま口を付けずにいたオレンジジュースは、氷がすっかり解けて色が薄くなっている。ストローでかき混ぜて飲んだけど、やっぱり水くさい。

それに気付いた瑠偉くんが、「新しいのを頼もうか?」と聞いてくれたり、「俺のおごりだからケーキ食べてもいいよ」と山岡さんがメニューを広げてくれたりしていたところ、


「すみません、遅くなりました」


背後から、女性の声がした。

どうやら”もう1人”が到着したらしい。立ち上がった山岡さんに倣って、私も挨拶した方がいいのかな、と後ろを振り返る。

その瞬間、首を傾げてしまった。


「え、」

「お待たせしました」


そこに立っていたのは、まさかの黒沢さんで。

一瞬、バイト中の彼女がオーダーを取りにきたのかと思った。だけど、彼女は私服で、山岡さんが、どうぞと隣の椅子を引いてあげている。

状況が理解できなくて瑠偉くんの方を見ると、彼は真顔のまま軽く頷いた。


「夕里さん、こんにちは」

「こんにちは……」

「あぁ、そうか2人は同じ高校だったっけ。彼女も例の事件の被害者なんだ」


嘘っ! 黒沢さんも?

それって今回の? いや、去年のってこと?



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