あしたの星を待っている


「君たちとは別の被害者から預かったものなんだけど、犯人グループの1人が落としていったものらしい。見覚えないかな?」


なに? なに? と覗き込んで。

心臓が止まるかと思った。

青と紫の糸で作られたミサンガ。

これって、まさか違うよね? 

袋に入っていたそれは、私の左足に付けてあるのと同じものだった。


「あの、私、そろそろ失礼します」

「もうそんな時間か。今日はありがとう。また何か思い出したら連絡して」

「はい」

「花菜、気を付けて帰れよ」

「うん」


どうにか笑顔を作って、小さく手を振る。

山岡さんと黒沢さんはもう少し話をするらしい。瑠偉くんは、このあとバイトのシフトに入っているそうで、途中まで送るという申し出を断って、ひとり店を出た。

ひとりになりたかった。


葉山先輩とお揃いのミサンガ。

あれが、どうして証拠品として残されていたのだろう。

先輩が落としていったの?

先輩は、犯人グループのうちの1人なの?

いや、違う。きっと違う。

あんなのどこにでもあるようなミサンガだもん。

それだけで、先輩を疑うなんてできるわけない。



「――――夕里さん!」


不意に呼び止められ、振り向くと黒沢さんがいた。

ここまで走ってきたのか、綺麗な黒髪は乱れ、額に汗が滲んでいる。




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