あしたの星を待っている
「歩くの早いね、探しちゃった」
「真っすぐ進んでただけだけど……。あの、どうかした?」
両ひざに手を付き、中腰の態勢で苦しそうに、はぁはぁと息を吐いている黒沢さんは、首を左右に振って駅の方を指さした。
何かあるのかと思いきや、ちょっと座って話そうということらしい。
外のベンチは喫煙所の近くで煙たいので、ファストフード店に入ることにした。
「ごめんね、呼び止めて」
「ううん、いいけど」
「あのさ、単刀直入に聞くけど、夕里さん、さっきのミサンガ知ってるよね?」
「えっ、」
「私、こう見えても観察力は優れてるの。証拠品を見せられた時の夕里さん。動揺しているように見えたよ」
「……」
しまった、顔に出ていたか。
でも、あんなのを見せられて涼しい顔なんてできるわけない。
黒沢さんが気づいたということは、山岡さんにも気付かれたかな。何かあるなと分かった上で、帰らされたということなのか。
「ねぇ、何か知ってるなら話して。今、こうしてる間にも次の犠牲者が出るかもしれないんだよ? いいの?」
「そうだけど……」
「お願い! 同じ被害者同士、情報を共有しようよ」
同じ被害者か。
逆にどうして黒沢さんは、こんなにも積極的になれるのだろう。
怖くないのかな、苦しくないのかな。