あしたの星を待っている
「苦しいのは、私が弱いからか」
「ん?」
「ううん。あのミサンガだけど、私も同じのを足にしてるの」
デニムの裾を捲って見せると、黒沢さんの表情がサッと変わった。
「これって、もしかして」
「葉山先輩とお揃い。先輩も左足にしてるはず」
「はず、ってことは今現在、あるかどうか分からないってことだよね?」
「最近は会ってないから……。でも、夏祭りの時はしてたよ」
それに、このミサンガが証拠品のものと同じとは限らないし、たまたま色の配色が同じだけのものかもしれないよ。
黒沢さんは「確かに」と頷いて、少し考え込むように口を閉ざした。
しばし時間をおいて、言いにくそうに切り出す。
「あのさ、もし、だけど。もしもの話、葉山先輩が事件の関係者だったら、夕里さんはどう? やっぱりショック?」
「そりゃ、ショックだよ。だけど、」
「もしそうなら、ちゃんと名乗り出てほしいなって思う」
「そっか……うん」
なに? なんだろう、歯切れが悪い。
いつもの黒沢さんらしくないなと思っていると、それがまた顔に出ていたらしく苦笑いされた。
「彼女である夕里さんに言うのは、気が引けるんだけど」
「いいよ、言って」
「私のね、友達のお兄ちゃんが葉山先輩と中学生の時に仲が良かったらしくて。昔は結構、遊んでたみたい。悪い噂も色々あってね、だけど、先輩の親はこの辺りの地主で権力者だから揉み消していたんだって」