あしたの星を待っている
やった! と手を叩いて喜んだ黒沢さんは、目尻を下げて笑う。
それは今までに見たことないくらい無邪気な笑顔で、曇りを全く感じさせない。
――同じ被害者?
その割には積極的だよね。
「じゃぁ、これから必要になるからラインのID交換しよう」
「うん。あ、ごめん、やり方分かんない」
「えー、そうなの? いいよ、やってあげる」
内に秘めるタイプなのかな。
辛かったり怖かったりしても、それを顔に出さない。
そういう強さが黒沢さんにはあるのかもしれない。
「あぁ、そうそう。葉山先輩の身辺を探ることなんだけど、矢吹くんには言わない方がいいよ」
「え? どうして」
「心配掛けたくないでしょ? 私も言わないし」
不愛想に見えて、実はものすごく心配症だよねー。
そう言って、黒沢さんは笑う。
学校の補習もカウンセリングも、いいって言うのにいつも付いて来てくれるし。
って、惚気かな。
瑠偉くんは黒沢さんが私と同じ被害者だと知って、心配して傍に寄り添ってあげているんだね。だから彼女は強くいれるのかな。
どうしよう―――。
こんなこと思っちゃダメなのに、まかり間違っても違うのに。
心が叫んでしまう。
『私のことは放置していたくせに』って。
「分かった、言わない」
頷きながら、2年前のことを記憶を手繰り寄せた。