あしたの星を待っている


あの夏の記憶は、細切れだ。

意識が戻った後に見た瑠偉くんのホッとしたような顔。

良かったと無事で、と涙混じりの声。

そこにいるのは、生まれた時から15年間ずっと一緒にいた彼なのに、なぜか違う人のように思えてた。きっと無意識の間に加害者と重ねたんだと思う。

馴れ馴れしく笑いながら話しかけてくるのが、当たり前のように傍に来るのが、恐ろしくて怖くて。

伸ばされた手を、跳ね除けた。


『花菜……?』

『触らないで』


そうだ、先に拒絶したのは私だった。

私だったのに、何もしてくれなかったとか、放置したとか、身勝手にも程がある。

しっかりしろ! 私!







夏休みの後半は、自分なりに事件について調べたりして過ごした。

2年前のものは示談にしたこともあってか、何も見つからなかったけど、去年のは地方紙に小さく載っていた。

山岡さんにも何度か会った。

だけど、ミサンガについては黒沢さんと話し合った結果、言わないことにした。


図書館に通ったり、黒沢さんの友達に会ったりして。

もちろん、部活にも行って。

駆け抜けるように8月は終わり、二学期が始まった。







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