あしたの星を待っている
「花菜、おはよう」
「おはようございます」
「なんか、こうやって一緒に歩くの、すっごく久々な気がするね」
「ですね」
久しぶりに会った葉山先輩は、ほんの少し日焼けをしていた。
お祭りの日以来、連絡を取ってなかったのだけど、聞けば、夏休みの後半、軽井沢の別荘に行っていたらしい。ということは、やっぱり先輩は事件に関係ないんじゃないかな。
少なくとも今年の件に関しては……。
そうだ、左足のミサンガがあるか、確かめなきゃ。
「俺に会えなくて寂しかった?」
「えっ、あ、はい。でも先輩は受験勉強が仕方ないですよ。勉強、大変ですね」
「……」
んん、あれ?
笑顔で答えたつもりだったけど、見上げた先輩はムスッとした表情でこちらを見つめ、大げさな溜息をついた。
なんだろう、何か気に障ることでも言った?
「おっはよーございます、先輩と花菜!」
そこに、元気いっぱいの七海が後ろからやって来て、私たちの間に割って入った。
勘の鋭い彼女は私たちの顔を交互に見つめて首を傾げる。
「どうしたの? 何かありました?」
「花菜のご機嫌を損ねちゃって」
「えー、なんでまた」
「俺が至らなかったから、かな」
「先輩が? そんなわけないじゃないですかー。ちょっと、花菜ぁ。あんまりわがまま言って先輩を困らせちゃダメだよ」
「えっ、あ、うん」
どうして、そうなる……。
わがままなんて言ってないし、というか何もないし、ただ会話してて、勉強大変ですね、会えなかったのは仕方ないですって、むしろフォローしたのに?
という心の声は押さえて黙ると、七海は「先輩に謝りなー」と言う。
それに対して先輩が、「花菜は悪くないんだよ。ごめんね」なんて答えるものだから、ますます感じが悪くなってしまった。