あしたの星を待っている


先輩って……。

なんていうか、”弱者”になるのが上手い気がする。

思えば初めて一緒に帰った時も、合宿の時も、大げさなくらいに謝ってきて自分が悪いと言いながらも、とても悲しそうで傷ついた顔をしていた。

そうしたら、もうこちらは何も言えないし、許すしかない。

他人から見たら、そこまで謝ってるんだしいいじゃん、ってなる。

わがまま過ぎない? って。

今みたいに。


「甘えるのとわがまま言うのは違うんだからね」

「分かってるって」

「分かってないじゃん!」


先輩と教室の前でバイバイした途端、七海の説教が始まった。

彼女からすれば、私の態度は目に余るものがあるらしく、親友としてビシッと言ってやろうとことみたいだけど――。

でも、でもさぁ、付き合ってる当人同士しか分からないものがあるんだよ。

って、言葉はさすがに飲み込む。


「私、時々、先輩のことが分からない」

「分からないって、例えば?」

「優しいけど、怖い時もあるし、意味が分からないことを言ってくるときもあるし。さっきもただ、受験勉強が大変ですねって言っただけなのに、急に機嫌悪くなって」


あの場合、どう言えば正解だったの?


「そこは花菜がもっと気遣ってあげないと」

「気遣ってるつもりだよ。でも先輩ってなんか……私のことを支配しようとしてくるの。それが怖くて」

「支配って大げさ。ちょっぴり俺様なところがあるってことでしょ。そんなの普通じゃん」

「普通じゃないよ、先輩は!」



あ、しまった、怒鳴ってしまった。

七海は目を大きくあけてポカンとしている。



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