あしたの星を待っている


普通じゃない、は、言い過ぎだ。

慌てて訂正しようとしたけど、七海の顔は険しくなり、カッと目を見開いたまま、机をバン――と強く叩いた。

騒がしかった教室が一瞬で静かになる。


「最低、そんなやつだとは思わなかった」

「七海、」

「あんたみたいなのが彼女で先輩が可哀想。調子乗り過ぎだよね、清純ぶるのも大概にしてほしいわ」


な、なみ……?

どうして、七海がそこまで怒るの?

真っすぐに向いた目に、何も言い返せず。ただ、七海から発しられる強い敵意に圧倒される。しばらくそのまま固まっていると、不意に後ろから声を掛けられた。


「どうした、担任が来るぞ」

「瑠偉くん……」

「北野も、座った方がいいんじゃね?」

「分かってる」


瑠偉くんの言葉に頷いた七海は、自分の席についた。

それと同じくらいのタイミングで教室のドアが開き、「おーい、宿題集めるぞー」と担任の先生がニンマリしながら入ってきた。

先生のゆるっとしたキャラクターで、ピりついた教室の空気が和む。

だけど、私は全身が椅子に沈んでしまうような重さに覆われていた。



七海に言われた言葉の1つ1つが、胸に刺さっている。

私が悪いの? 無神経だった? どして七海があそこまで怒ったのか分からないけど、正義感の強い彼女だけに思うところがあったのだろう。

でも、七海には私の考えとか感情とか、聞いて欲しかったよ。

とにかく、あとでちゃんと話さなきゃ――。






< 117 / 171 >

この作品をシェア

pagetop