あしたの星を待っている
そうだ、男性恐怖症を治すため七海に勧められて付き合うことを決めた。
付き合っているうち先輩のことを好きになれると思っていた。優しくしてくれたら嬉しかったし、想いをぶつけてくれるたび、ドキドキした。
でも、それが好きって感情なのかと聞かれたら、
「……自信ない」
「えっ、泣かないでよ」
「ごめん、ちょっと色々ありすぎて」
「もうー、私が泣かしたみたいになるでしょ。矢吹くん、どうにかしてー」
は? 瑠偉くん!?
慌てて顔をあげると、教室のドアのところに瑠偉くんが立っていて、彼は心配そうな眼差しをこちらに向けていた。
やだ、泣いてるところとか見られたくない。
手の甲で涙を拭っていると、ずんずんと近づいてきた彼に腕を掴まれた。
「じゃあ、私、行くから」
「悪いな、黒沢」
いつから、居たんだろう?
私と黒沢さんの話、どこから聞いてた?
瑠偉くんに掴まれた腕は熱く、けれど少しも嫌じゃなくて怖くもない。
先程まで黒沢さんが座っていた椅子に鞄を置き、机に凭れかかった瑠偉くんは、ずぼんのポケットからハンカチを出した。
「北野とのこと、大丈夫か?」
「ありがとう。大丈夫、何とかなるよ」
「あんま無理すんなよ」