あしたの星を待っている
冷ややかな声がした。
それはまるで罪人を咎めるような鋭さで、声がした方に視線を向けると、練習着姿の七海が立っていた。
腰に手を当て、睨み付けるような目をしている。
「練習サボって何してるかと思えば、浮気?」
「違っ! そんな言い方しないでよ、七海」
「あ、そっか。先輩への当てつけか、だったら陰でコソコソしないで、先輩の目の前でやれば? 妬いて欲しいんでしょ?」
「七海!」
どうしてそんなことを言うの?
というか、七海らしくないよ、変だよ。急にこんな意地の悪い……。
「北野、違うんだ。誤解するな」
「矢吹くんもこの子を庇うんだね」
「七海、」
「もううんざり、どいつもこいつも花菜、花菜って。そんなにこの子がいい? 何よ、ちょっと人より可愛いってだけじゃん。それ以外何もないじゃん。いつもおどおどしててさ、男性恐怖症だって嘘なんじゃ――、」
ダンッッッ、と大きな音がしたと思ったら、近くにあった机が転がっていった。
瑠偉くんが蹴ったのだ。
「それ以上言ったら、許さない」
「瑠偉くん、やめて」
その時、瑠偉くんのポケットから彼の生徒手帳が落ちて。
拾った七海が「何よこれ」と眉を顰めた。
見せられたそこには、私が持っているのと同じ、私の子供の頃の写真があった。
昔、瑠偉くんが撮ってくれた写真。
それを、どうして彼がーーー。
しばらく呆然としていたけど、
「ばっかじゃないの!」
七海は青ざめた表情で捨て台詞を吐き、教室を出から出て行った。
その走る去る足音を聞きながら、どうしてこんなことになったのだろうと、私は頭を抱えた。