あしたの星を待っている
これが単なる嫉妬なら、どんなに良かっただろう。
私の真剣さが伝わったのか、瀬戸高の1年男子は、場所を変えようと言い、人気の少ない方へ歩いて行った。そのあとを黒沢さんと追う。
彼の後ろを歩いて初めて気づいたが、着ているシャツの背中には、NAKATSUと書かれており、それが彼の名前なんだろう。
なかつくん、中津くん、かな。
「で、何を話せばいい?」
着いたのは中庭らしき場所だった。
うちの学校にもあるような木々に覆われた空間で、ベンチがいくつか並んでいる。その1つに腰掛けて、「あの、」と切り出したところで、黒沢さんに止められた。
「私に聞かせて。葉山先輩と過去に付き合いのあったグループを調べてるの」
「グループ? それって地元の仲間のことかな」
「あなたもその1人?」
「まぁね。小、中学校が同じでよくつるんでたからな。葉山さん家って金持ちじゃん? しかも地元の権力者だし、悪い事しても大抵はもみ消してくれんの。メシとかも奢ってくれるし、良い先輩だったよ」
「良い先輩、だった?」
「俺が高校に上がって少しした頃かな、もうお前らとは付き合わないって言われたんだよ。なんか知んねぇーけど、急に真面目になっちゃって。そのくせ、女癖は悪いから手頃なのをとっかえひっかえ。むかつくよな、めんどくさい後始末は全部俺ら任せなんだぜ」
彼女の前で言うことじゃねぇけど、って中津くんは苦笑いをする。
見た目は派手だし合宿の件もあって怖い人かなって思ってたけど、そうでもないのかもしれない。
むしろ、良い人のふりをして裏では好き放題していた先輩の方が怖いよ。