あしたの星を待っている


矢吹 瑠偉(るい)くん。

教室の端の方にいることが多い彼は大人しく目立たない存在で、さっき名前がでた蒔田くんというちょっと不良っぽい子とよくつるんでいる。

他にも別のクラスの派手めな子だったり、良くも悪くも話題になる子と一緒にいるから、噂はよく聞く。

夜にバイクを乗り回していたとか、煙草を吸っていたとか、他校生と揉めたとか。

真紀子ちゃんの言う通り、昔は全然そんなことなかったのになぁ。

家が隣で産まれた月も同じで、物心ついた頃から一緒だった彼とは何でも話せる家族のような存在だった。

だけど、今は違う。

傍にいても目も合わせない遠い存在。


「あっ、落ちたよ」


次の授業の用意をしようと、カバンの中を探っている拍子に手帳を落としてしまった。中が開いて見えた写真に七海が首を傾げる。


「これって、花菜?」

「うん、5歳くらいの時かな」

「へぇ! この頃から可愛いかったんだね」

「違うよ、これはよく撮れてる写真なの。お気に入りだから、ずっと持ってるんだ」


良い写真には撮影者の想いがこもっているんだ。

そんな言葉をよく聞かされた。

多分、彼のお父さんの受け売りだと思うんだけど、ポーズをとるその瞬間、被写体は特別なものになれると身をもって知った。

目を輝かせてシャッターを切る瑠偉くんは、どこに行ったのだろう。



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