あしたの星を待っている


「動画が見つかれば、大きな証拠になるよ」


息巻く私に、黒沢さんは首を傾げた。


「先輩のこと、信じるんじゃなかったの?」

「うん、信じたかった」


初めは先輩の身の潔白を証明させるために調べようと思った。

だけど、中津くんの話を聞いたり、客観的な立場で先輩を見ているとおかしいと思う点がいくつも出てきた。

それに、黒沢さんと一緒にいるようになって勘づいたことが1つあるんだ。

もし、当たっているなら不可解だった色んなことが納得できるの。


「”友達のお兄ちゃんが、葉山先輩の友達”ってのは、嘘だよね」


真っすぐ黒沢さんを見つめ返すと、彼女は驚いたように目を見開いた。

黒い瞳が大きく揺れる。


「本当は自分のお兄さんが友達だったんじゃない?」

「どうしてそう思うの?」

「悪いけど、黒沢さんは私と同じ被害者にも見えない。初めは強い人なんだろうなって思っていたけど日頃の言動を見ているとやっぱり違うなって」


じゃぁ、どうして被害者だなんて言ったのか。

なぜ事件の真相を追っているのか、考えて、1つの仮説にたどり着いた。


「黒沢さんは、2年前に私が襲われた時に主犯として捕まった人の妹……」


それなら、しっくりくるんだ。

初めから葉山先輩を知っていたことも、犯人であると確信していたことも、ある程度の情報を持っていて私に接近してきたことも。

『幸運ね』

と、転校してきた日に保健室で言った言葉も。

すべて繋がる。





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