あしたの星を待っている
先輩はパソコンの中に女の子を脅すための動画を入れている。
そしておそらく、そのパソコンはさっき目についた棚にあるやつだ。
先輩が離れから出て行ったのを確認した私は、大急ぎでパソコンを起動させ、あらかじめ用意してあったUSBメモリーを接続させた。
――と。
「やっぱりパスワードか、」
予測はしていたけど、パソコンを使うにはパスワードが必要だった。
誕生日、記念日、出席番号、大方考えてきたものは、どれも合わない。もちろん、0000や、9999など初期設定のものも違う。
どうしよう、早くしないと先輩が戻ってきちゃう。
何でもいい、適当に!
「あ! 開いた!」
驚いたことに、パスワードは私の生年月日だった。
『あんたは特別みたいだから』
こんな時に、どうして中津くんの言葉が浮かぶのだろう。
まさかね、そんなはずない。
先輩が私に構うのは、私を監視するため。
私が事件のことを思い出さないように、もしくは思い出したとしても他言しないように見張っていただけ。
でも、それなら初めから弱みを握ればよかったのに。
脅して怖がらせて動画を撮って征服すればよかったのに。
そうしなかったのは、なぜ?