あしたの星を待っている
HRの終わりを告げるチャイムが鳴ると、教室の中は解放感に包まれる。
ばいばいと、クラスメイトに挨拶しながら、窓側の席に寄り、ポニーテールがよく似合う華奢な肩を軽く叩いた。
「七海、部活行こう」
今日は夏の合宿に向けての説明と班分けの実力テストがある。
1,2年は早く来てテストの準備をしておくようにと言われているので、まだ席に座ったままの七海を急かした。が、彼女は必死に何かを書ている。
「できた! 花菜、先行ってていいよ。小論文提出してくる」
「もう書けたんだ」
「適当にね。だって明日になったら1枚増えるもん。花菜もさっさと書いちゃいなよ」
「部活終わって余裕があったら書く」
「余裕? そんなのあるわけ?」
スポーツバックを肩に下げた七海がニヤリと笑う。
どういう意味だと聞き返そうとした時にはもう、彼女は教室を出て廊下の向こうを走っていた。元気だなぁ。
七海とは高校の受験日に席が前後だった。その後、入学式の日に校門のところでばったり再会。必然的に仲良くなり、バスケ部も彼女の誘いで入った。
明るくて、優しくて、誰とでもすぐ打ち解けることができる七海は行動的で、内向的な私と正反対。
それなのになぜか気が合って、のんびり屋の私をいつも引っ張ってくれる。私にとってはキラキラ眩しい太陽のような存在。
彼女は希望に満ち溢れている。
それに比べて私は……と、卑屈な思いに支配されそうになり頭を軽く振った時だった。
「夕里さん」
不意に名前を呼ばれ、肩に何かが乗った。
それが人の手だと分かった瞬間、びくりと体が反応し飛び退いてしまった。
「ごめん! 驚かせたね」
「あっ葉山先輩……こちらこそ、すみません」