あしたの星を待っている
尋ねられても、頭がぼんやりしていて何も考えられない。
荷物を持ち上げるように先輩の肩に担がれた私はベッドに寝かされた。ポンッと重力のまま沈んで跳ねる。
どうやって抵抗するんだっけ? 声はどうやって出す?
ぼやける視界の先には白い天井と、先輩の顔。
「初めて見たとき、この子だって思ったんだ」
――はじめて? それは、いつのこと?
「まさか、写真の子に出会えるなんて思ってなくてさ。たっぷり可愛がってやるつもりだったのに、あのバカがしくじるから遠回してしまったよ」
――写真?
「でも、やっぱり俺と花菜は運命で繋がってるんだろうな。高校で見かけたときはマジで嬉しかった」
――なんの話をしているのだろう?
私の体に馬乗りになっている先輩は、楽しそうに笑っている。
それなのに、どこか寂しげで、どこか悲しげで、盛り上がるように溢れでてきた涙の粒が、私の頬に落ちた。
「花菜だけが、俺を見てくれた。花菜だけが、俺を許してくれた。花菜だけが、本当の俺を理解してくれようとした」
「せ、ん……」
「それなのになぜ、こんなことをするんだよ!」
叫ぶように言った先輩は、パソコンの方に視線をやった。
データを抜き取ることはできたものの、元の状態に戻すまではできなかったそれが、青白い明りを放っている。
どうして勝手にパソコンを触ったかなんて、言わずもがな。
先輩の目は怒りと悲しみに満ちていた。