あしたの星を待っている
08.黄昏の街と、星の輝き
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『絶好の撮影場所を見つけたの』
『へぇー』
『あ、信じてないでしょ。ほんとに絶好なんだから。あのね、旭丘っていって、ここから電車で2時間くらい掛かるんだけど、夕日に照らされたススキが黄金に輝いて綺麗なんだ』
『すすきって、魚?』
『それはスズキ。ススキは草だよ!』
『草かよ』
『あ、馬鹿にしたでしょ』
あの頃、瑠偉くんはお父さんが行方不明になったばかりで酷く落ち込んでいた。
私はそんな彼を励まそうと学校が休みになるたびに、電車で遠出をして写真撮影できそうな場所を探していた。
そして見つけた、あのススキ畑。
小高い丘の上に立って黄金の景色を見た瞬間、それまで馬鹿にしていた彼も言葉をなくして泣いたね。綺麗だねって、ただただ心を奪われていた。
『ね、写真撮ろうよ!』
ここで撮ったらきっと瑠偉くんのお父さんも喜んでくれる。
もしかしたら帰って来てくれるかもしれないね、って、そんな話をしたよね。
その狙い通りススキ畑で撮った写真は雑誌『フォトステ』の年間グランプリに選ばれて、表彰された。たくさんの人から賞賛を受け雑誌には幾度も掲載された。
だけど、瑠偉くんのお父さんは帰ってこなかった。
写真を見てくれたのかどうかも、分からない。
幼かった、向こう見ずだった。
12歳、小学6年生の私たちの切なる願いは届かなかった。
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