あしたの星を待っている
それにしても、どうしてあんなにタイミングよく来てくれたのだろう。
その疑問には、黒沢さんが答えてくれた。
「夕里さんが1人で葉山先輩の家に行くことになったって、中津くんに話したら絶対危ないから止めろって言われて。でも、正直、動画のデータは欲しいし、チャンスであることは間違いないから矢吹くんも呼んで待機することにしたの」
「家は何度か行ったことあるから知ってたんだ。裏門から忍び込んだんだぜ」
と、中津くんがピースサインをする。
その隣で瑠偉くんがムスッとした顔で、「俺は反対したけどな」と腕組した手をトントン指で叩いている。
機嫌が悪い時によくする癖だ。
「おかしいと思ったんだよ。ここ最近、黒沢とコソコソ話してるし。部活を休んでるくせに帰って来るの遅いし」
瑠偉くん、気に掛けてくれていたんだ。
それなのに仲間外れにするような真似をして悪かったな、と申し訳ない気持ちでいたところ、黒沢さんが深々と頭を下げた。
「矢吹くんに最初から話したら、絶対反対すると思って。だから、夕里さんにも内緒にするように釘を刺したの。全部、私の責任。危ない目に遭わせてごめんなさい」
「そんな! 謝らないで。自分がそうしたいと思ったからやっただけ」
「本当に頑固なやつなんだから」
ぺシッと、またオデコを叩かれた。
今度はさっきほど痛くなくて、ごめんね、って見上げた瑠偉くんは、呆れたような顔をしながらも笑ってくれた。