あしたの星を待っている
そこまで言いかけた瑠偉くんだけど、急に思い直したように首を振って「また来る」と病室から出て行った。中津くんも用事があるみたいで、その後に続く。
瑠偉くんは何が言いたかったのだろう?
訴えるように黒沢さんの方を見る。
すると、彼女は「しょうがないなぁ」という顔をして、ベッドの端にどかりと座った。
ちなみに、私は大事をとって一晩だけ入院することになったそうで、両親はその手続きをしに行っているみたいだ。
「幼馴染って色々面倒くさそうだね」
「え? 何、急に」
「お互いのことなんでも知っているせに、距離が近すぎて気持が分からないんだね。どうして、私と矢吹くんが仲良くなったと思う?」
「どうしてって、それは」
「矢吹くんがいつも夕里さんを見ていたから、だよ」
たぶん、私は口を開けてポカンとしていたんだと思う。
黒沢さんは喉を鳴らすようにクスクスと笑った。
「葉山先輩を追って転校してきたって話したでしょ? その先輩の彼女が夕里さんだと知って、まずあなたに近づこうと思った」
「私に?」
「うん。でも転校生の私が急に接近することで葉山先輩に警戒されるんじゃないかと思案していたところ、夕里さんのことをずっと目で追っている男の子に気が付いたの」
「……」
「それが矢吹くん。私、1番後ろの席でしょ? 授業中、後ろから教室の様子を見ていると、誰が誰を見ているとか、結構分かるもんだよ」