あしたの星を待っている
「瑠偉くん、私を撮って」
「……花菜」
「今頃、気づいた。私ね、写真を撮ってる瑠偉くんが好きなの。さっきみたいに夢中でシャッターを切ってる瑠偉くんを見てると、元気になるの」
好きなことに打ち込む姿が、夢に向かって頑張っている姿勢が、私にたくさんの希望を見せてくれた。
そしてそんな彼に写真を撮ってもらっている間、特別になれる自分が嬉しかった。
そう伝えると、瑠偉くんは「そんなの、俺もだ」と言い、私の腕を掴んだ。
「ここに座って、背中こっち向けて」
「瑠偉くん」
「元気をもらっていたのは俺の方だ。父さんがいなくなって寂しかった時でも、花菜を撮影している時だけは……いや、花菜が傍にいてくれる時は楽しかった。俺にとって花菜は希望だった。それなのに、俺が撮った写真のせいで、」
「それは違うよ! 違うから、もう自分を責めないで」
「花菜、ごめんな」
「私の方こそ、ごめん。瑠偉くはいつも私を見守ってくれたのに、それに気が付かないで、楽な方に逃げて」
「楽な方って、先輩と付き合ったことか?」
「うん、でも全然楽じゃなかった。嫌われても、冷たくされても、瑠偉くんの傍にいる方がずっと良かった」
「そうだよ俺、ずっとイライラしてて。自分のせいで花菜はあんな目に合ったのに、その花菜に八つ当たりしたりして、感じ悪かったよな。ごめん」
「だから、瑠偉くんのせいじゃないってば」
気が付くと涙が溢れていて、その涙を拭う瑠偉くんも泣いていた。
心の中にある思いをすべてぶつけ合った私たちは、しばらく涙が止まらなくて。
だけど頬を伝って落ちた雫は、乾いた心に潤いを与えるようだった。
ねぇ、瑠偉くん。
この更地になった地面にも、いつかまたススキが生えてくるよ。
そうしたら、また写真を撮りに来ようよ。