あしたの星を待っている
えいっ、と鼻を摘まむと、驚いたように目を丸める。
子供の頃によくやってくれた、元気になるおまじないだと言えば、お返しとばかりに頬を摘ままれ、次いで柔らかいものが触れた。
蝶の羽が触れるような柔らかいキス。
「……怖くない?」
「瑠偉くんだもん、怖いわけない」
ぎゅっと抱きしめられた。
「俺も花菜が好き」
「瑠偉くん、今まで見守っててくれてありがとう」
「過去形じゃなくて、」
「うん?」
「これからもずっと見守るから、傍にいて」
瑠偉くんの腕の中で大きく頷いて、顔を見上げると。
黄昏の空はいつの間にか溶けて、夜になっていた。
帰ろうか、と手を繋いで歩き出す。
「見て、綺麗だね」
雲から微かに顔を出す星たちが、優しい光を放っている。
まるで、瑠偉くんみたいな星。
人は見える目標や希望がそこにないと迷ってしまいがちだけど、
暗闇の中でも星はちゃんとあって、目には見えない輝きを放っているものだと。
教えてくれたその手を。
私は決して離さない。