あしたの星を待っている


瑠偉くんが指さすそこには、グランプリを取った写真と一緒にプロのカメラマンが書いてくれた講評が載っていた。

構図がいいとか、被写体に愛情を感じるとか、何をとってもすばらしいといったお褒めの言葉が並んでいる。

それの何が引っかかるのだろうと、最後まで読んで――。


「え! 嘘、これって!」

「見間違いじゃないよな」

「違う、間違いじゃないよ、瑠偉くん!」


作品に講評をくれたのは、矢吹 泰一。

彼のお父さんだった。


「すげー、夢みたい」


くしゃっと、子供みたいな笑顔。

嬉しそうなその顔を見たら、何だか泣きそうになって俯くと。

爽やかな香りに包まれた。

瑠偉くんの胸にオデコをくっ付けたまま、喜びをかみしめる。


「夢じゃないよ」

「うん」

「やっと、見えた」

「見えたって、何が?」

「あしたの星」



真っ暗闇の中にいると思っていた。

明るい星は、2度と見れないと思っていた。

けれど、それは見えていないだけだった。

明るい未来を見せてくれる、あしたの星、希望。




泣きながら帰った、あの頃の私たちに教えてあげたい。

希望の光は決して消えず、傍にあるんだよ、と。





FIN


















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