あしたの星を待っている
「すみません、ちょっと考え事しちゃって」
「悩みがあるなら聞くけど」
「あ、いえ、そんな大したことではないので」
「そう?」
優しい声。
目が合うと、ん? と私からのサインを見落とさないとばかりに見つめてくれる。
歩く速さも私に合わせてくれている。
七海が言っていた通り先輩は100点満点の彼氏だ。
なのに、まだ、
「手、繋げそう?」
「ごめんなさい、まだちょっと」
「謝らなくていいよ、じゃぁこういうのはどう? 花菜が俺の腕を持つ」
先輩が肘を軽く曲げたので、そこに手を添えた。
「こうですか?」
「そう。限界がきたら離していいから少しずつ慣れて」
「……はい」
腕を持つというのは、必然ながら距離が近くなるんだな。
これはこれでなかなか勇気がいる。
昔は男の子と手を繋ぐことくらい気にせずできたし、瑠偉くんとなんか一緒の布団で寝たこともある。おんぶしてもらったり、ふざけて抱き合ったことも。
あれは子供だったからできたのかな。
異性だと意識するからできないのかな。
それともやっぱり、微かに残る記憶のせいかな。