あしたの星を待っている


「花菜」

「え? やっ、」


先輩が急に歩を止めて振り向いたせいで、顔と顔がくっつきそうなくらい近づき、咄嗟に後ろへ飛び退いた。

それで1つ確信する。

異性だと意識しているからじゃない、怖いんだ。


「ご、ごめんなさい」

「あ、いや俺も今のも無神経だった。ごめんね」

「先輩、私、やっぱり――」


無理です……。

そう言おうとした瞬間、先輩の両手が私の後ろに回りガバッと抱きしめられた。


「やっ! 離し、」

「暴れてもいいよ、大声を出してもいい。蹴っても殴られても、絶対離さないから」

「せ、んぱい」

「花菜がどうしてそこまで男を怖がるのか分からないけど、治してあげたいんだ。だから1歩ずつ、と思っていたけど、気持ちを止めれなくてごめん」


抱きしめられる力が、さらに強くなった。

じりじりと夏の日差しは熱いはずなのに、足元は凍えるほど冷え冷えとしていて、震えが止まらなくて。

それなのに、耳元にあたる先輩の胸から聞こえる心臓の音に安らぎを覚え、脳と心と体が別々に動くような気がした。


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