あしたの星を待っている
02.胸のモヤモヤと、転校生
『どう? その後、先輩と発展あった?』
「ないよ」
『えー、手とか繋いでないの?』
「手っていうか……」
言いかけた瞬間、ドクン、と心臓が波打った。
先輩の声、匂い、頬に触れる熱、息が止まりそうなほどの強い力。強い想い。それら1つ1つが頭の中で蘇ってくる。
それから、別れ際に言われたあの言葉。
目が笑ってなかった。
怖い、嬉しい、不安、気恥ずかしい、と混在する気持ちに戸惑っていると、電話の向こから『どうしたの~?』という七海の呑気な声が聞こえた。
「恋愛って、結構なエネルギーを使うんだね」
『何言ってんの、当たり前じゃん』
「当たり前なんだ……」
『もしかして、花菜って今まで人を好きになったことなかったりする?』
「それは、」
どうだろう。
誰かのことをいいな、素敵だなと思うことはあっても、それが恋愛かと聞かれると自信はない。それに、ここ数年は男子と接触することを避けていたから分からない。
ただ、傍にいたいと思う人はいたけど……。
「そういう七海こそどうなの? 好きな人いないの」
『いるよ』
「え?」
『でも、まだ内緒』
何それ、ずるくない?
七海って時々こういうところがある。人のことはあれこれ聞くくせに、自分のことは黙っていて事後報告。相談されたことなんて1つもない。
それって友達として寂しいんだけど、と拗ねてみたものの、七海は笑うだけで教えてくれなかった。