あしたの星を待っている
七海の好きな人、か。
クラスの人かな、それともバスケ部? 私も知ってる人かな。他校の人や塾の人だったら知らないなぁ。
通話を切った後もそれが気になって、自室の中をくるくる回る。
そうしながらも制服を脱ぎ、部屋着に着替えるという器用なことをしていると、玄関の方が騒がしいことに気が付いた。
誰か来たのかな。
部屋から出て階段の途中から下を覗くと、
「花菜、いいところに降りてきた」
こちらを向いたお母さんに見つかった。
その向こうに瑠偉くんがいる。
「本当に、いいんで」
「そう言わないで、ね? 花菜からも一緒に夕ご飯食べていくように言って」
また、お母さんは。
状況を察するところ、何かお使いがあってうちに来た瑠偉くんを、強引に引き留めているのだろう。昔っから思いついたら頑固というか、しつこいというか。
人の迷惑をまるで考えていない。
「お母さん、瑠偉くんだって都合があるし、ご飯も家にあるでしょ」
「でも、理恵(りえ)さん今日から出張だって言うし、瑠偉くんもバイト休みでしょう? コンビニ弁当より、おばさんの料理の方が美味しいわよ」
あぁ、ダメだ、これ絶対に断れないやつ。
それは瑠偉くんも分かっているようで、観念したように「じゃぁ、ご馳走になります」と靴を脱いで家の中にあがった。
「瑠偉くんが家で食べるの、久しぶりね! 花菜、お手伝いしてね」
「はいはい」
「あ、瑠偉くんはいいのよ、テーブルについてて。今日はね、オマール海老の香草焼きに、サーモンとトマトのべジカルパッチョと――」